労働基準法のススメ

労働基準法を理解する際に役立つ労働時間や残業のこと、有給休暇、解雇、休日、退職などの情報を提供

 

労働基準法の案内人

労働基準法のススメでは、労働基準法を理解してもらいたい経営者の方及び労働者の方向けに役立つ情報を掲載しています。労働基準法が制定された背景としては、日本国憲法にあります。それは第27条第2項において「賃金、就業時間、休憩そのた勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定されており、これを受けて制定されたのが労働基準法です。
労働に関連する法律には、労働安全衛生法や労働者災害補償保険法など数多くの法律がありますが、労働基準法はこれら労働に関する法律の基本法となります。
よって労働者を雇う側である経営者の方は、十分理解しておく必要があると考えます。さらに雇われる側である労働者も理解しておく必要はあるでしょう。
労働に関するトラブルが多発しており、訴訟にまで発展してしまうことも珍しくありません。このようなトラブルを回避するためにも、経営者及び労働者双方が労働基準法を理解しておきたいものです。


 

労働基準法の改正について

労働基準法の改正

労働基準法は労働法の基本となるものであり、雇用環境の変化等によって改正されることが多々あります。
労働基準法の改正は経営者や労務管理担当者は当然ですが、その他労働者も知っておく必要があるでしょう。
特に労働時間に関することは賃金だけでなく、労働者自身の健康に大きく拘ってきますのでしっかりと確認しておく必要があります。

 

平成20年12月12日に公布され、平成22年4月1日に施行された改正労働基準法について紹介します。

 

長時間労働を抑制すること、労働者の健康を確保すること、仕事と生活の調和を図ること等を目的として労働基準法の一部が改正されました。


(1)時間外労働の割増賃金率の引き上げ

割増賃金率の引き上げ

1ヶ月60時間を超える時間外労働について、法定の割増賃金率が現行の25%から50%に引き上げられた。
ただし、中小企業において当分の間は法定割増賃金率の引き上げは猶予されている。

 

注意が必要なこととしては、割増賃金率が引き上げられるのは時間外労働のみが対象となっており、35%の割増賃金率の休日労働や25%の割増賃金率の深夜労働においては変更はない。

 

中小企業においては割増賃金率の引き上げは猶予されているが、猶予期間は設定されておらず、施行から3年経過した時点で改めて検討されることとなっている。

 

この猶予される中小企業とは、以下に該当する企業を指す。
@資本金の額または出資の総額が、
 小売業  :5,000万円以下
 サービス業:5,000万円以下
 卸売業  :1億円以下
 上記以外 :3億円以下

 

または、

 

A常時使用する労働者数が、
 小売業  : 50人以下
 サービス業:100人以下
 卸売業  :100人以下
 上記以外 :300人以下
となっている。
これは事業場単位ではなく、企業(法人や個人事業主)単位で判断することとなる。

 

深夜労働との関係としては、深夜の時間帯(22:00〜5:00)の時間帯に1ヶ月60時間を超える法定時間外労働を行わせた場合には、深夜割増賃金率25%以上+時間外割増賃金率50%以上=75%以上となる。
法定休日労働との関係としては、1ヶ月60時間の法定時間外労働の算定には、法定休日(使用者は1週間に1日または4週間に4回の休日を与えなければならずこれを「法定休日」という。法定休日に労働させた場合には35%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。)に行った労働は含まれないが、それ以外の休日(例えば土曜日など)に行った法定時間外労働は含まれる。
なお、労働条件を明示する観点や割増賃金の計算を簡便にする観点から、法定休日とそれ以外の休日を明確に分けておくことが望ましいとされる。


(2)割増賃金の支払いに代えた有給の休暇の仕組みの導入

有給の休暇の仕組みの導入

事業場にて労使協定を締結すれば、1ヶ月に60時間を超える時間外労働を行った労働者に対して、上記割増賃金の引き上げ分(25%から50%に引き上げた差の25%分)の割増賃金の支払に代えて、有給の休暇を付与することができるようになった。

 

注意が必要なこととしては、労働者が上記有給の休暇を取得した場合であっても、現行の25%割増賃金の支払は必要となる。

 

労使協定の内容としては、@代替休暇の時間数の具体的な算定方法、A代替休暇の単位、B代替休暇を与えることができる期間、C代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日の4項目となっている。

 

この労使協定は事業場において代替休暇の制度を設けることを可能にするものであり、労使協定を締結したからといって個々の労働者に対して代替休暇の取得を義務づけるものではない。
個々の労働者がこの代替の有給の休暇を取得するか否かは、労働者の意思により決定される。

 

また、付与する代替の有給休暇は、まとまった単位で与えることにより労働者の休息の機会を確保する観点から、1日、半日、1日または半日のいずれかによって与えることとされている。

 

半日については、原則労働者の1日の所定労働時間の半分のことを指すが、厳密に所定労働時間の2分の1とせずに、例えば午前の3時間半、午後の4時間半をそれぞれ半日とすることも可能である。
この場合は、労使協定でその旨を定める必要がある。

 

端数の時間がある場合としては、労使協定で、端数として出てきた時間数に、他の有給休暇を合わせて取得することを認めている場合には、代替休暇と他の有給休暇を合わせて半日または1日の単位として与えることができる。
他の有給休暇には、事業場で任意に創設する有給休暇のほか、既存の休暇制度や時間単位の年次有給休暇が考えらるが、労働者の請求が前提となることに注意が必要となる。

 

代替休暇を与えることができる期間としては、特に長い時間外労働を行った労働者の休息の機会の確保が目的なので、一定の近接した期間内に与えられる必要がある。

 

よって法定時間外労働が1か月60時間を超えた月の末日の翌日から2か月間以内の期間で与えることを定める必要がある。
たとえ期間内に休暇が取得されなかったとしても、使用者の割増賃金支払義務はなくならず、当然のこととして、代替休暇として与える予定であった割増賃金分を含めたすべての割増賃金
額を支払う必要がある。

 

代替休暇の取得日の決定方法としては、例えば、月末から5日以内に使用者が労働者に代替休暇を取得するか否かを確認し、取得の意向がある場合には取得日を決定する、というように取得日の決定方法について協定する必要がある。
ただし、この休暇を取得するか否かは法律上、労働者に委ねられており、強制してはならないことはもちろんのこと、代替休暇の取得日も労働者の意向を踏まえたものとしなければならない。


(3)割増賃金引き上げなどの努力義務

割増賃金引き上げ

限度時間(1か月45時間)を超える時間外労働を行う場合には25%を超える率とするように努める必要がある。

 

「時間外労働の限度基準」(平成10年労働省告示第154号:限度基準告示)により、1か月に45時間を超えて時間外労働を行う場合には、あらかじめ労使で特別条項付きの時間外労働協定を締結する必要があるが、新たに、

 

@特別条項付きの時間外労働協定では、月45時間を超える時間外労働に対する割増賃金率も定めること

 

A上記@の率は法定割増賃金率(25%)を超える率とするように努めること

 

B月45時間を超える時間外労働をできる限り短くするように努めること

 

が必要となる。
この時間外労働協定の内容は、限度基準告示に適合したものとなるようにしなければならず注意が必要である。

 

限度時間とは、労働基準法において労働時間は1週40時間、1日8時間までと定められているが、労使協定(36協定と呼ばれる)を締結した場合には、これを超えて働かせることが可能であるが、「時間外労働の限度に関する基準(平成10年労働省告示第154号)」において、一定の限度が定められてる。
限度時間は、1週間が15時間、2週間が27時間、4週間が43時間、1ヶ月が45時間、2ヶ月が81時間、3ヶ月が120時間、1年間が360時間となっており、他に1年単位の変形労働時間制を採用している場合の限度時間もある。

 

特別条項付き36協定とは、臨時的に特別な事情がある場合に限り労使において締結するもので、この締結によって限度時間を超えて働かせることが可能となる。


(4)労使協定の締結によって年次有給休暇を時間単位で付与することができる

年次有給休暇を時間単位で付与

現行では、年次有給休暇は日単位で取得することとされているが、事業場で労使協定を締結することにより、1年に5日分を限度として時間単位で付与することができるようになった。

 

年次有給休暇を日単位にて取得するか、時間単位で取得するかは労働者が選択することとなる。
労働者が希望し、使用者が同意した場合であれば、労使協定が締結されていない場合であっても、日単位取得の阻害とならない範囲で半日単位で与えることが可能である。
この単位は、日単位と時間単位であり、それ未満の分単位などは認められない。

 

労使協定の内容としては、@時間単位年休の対象労働者の範囲、A時間単位年休の日数、B時間単位年休1日の時間数、C1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数である。

 

時間単位年休の対象労働者の範囲としては、一部を対象外とする場合は、「事業の正常な運営」を妨げる場合に限られ、取得目的などによって対象範囲を定めることはできない。

 

時間単位年休の日数は5日以内の範囲で定め、前年度からの繰越しがある場合は、当該繰越し分も含めて5日以内となる。

 

時間単位年休1日の時間数としては、1日分の年次有給休暇に対応する時間数を所定労働時間数を基に定め、時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げてから計算する。
日によって所定労働時間数が異なる場合は、1年間における1日平均所定労働時間数、これが決まっていない場合には決まっている期間における1日平均所定労働時間数を基に定める。

 

1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数としては、例えば2時間などと規定する。
ただし、1日の所定労働時間数を上回ることはできない。

 

時季変更権との関係としては、時間単位年休も年次有給休暇であるので、事業の正常な運営を妨げる場合は使用者による時季変更権が認められる。
ただし、日単位での請求を時間単位に変えることや、時間単位での請求を日単位に変えることはできない。

 

支払われる賃金額としては、時間単位年休1時間分の賃金額は、@平均賃金、A所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、B標準報酬日額(ただし労使協定が必要となる)のいずれかをその日の所定労働時間数で割った額となる。
@〜Bのいずれにするかは、日単位による取得の場合と同様すること。